第一シリーズからずっと見続けてきた一視聴者としては嬉しいかぎりだ。
しかも、今回は(微力ながらも)取材に協力させていただいた。光栄な事。
喜びついでに(?)、まずは一週目のテーマ「日光東照宮〜東照宮は江戸のテーマパーク!?」の予習(もしくは復習)となるための書籍をいくつかここでご紹介したい。
筆者撮影 |
日光東照宮の創建の謎から、彫刻ひとつひとつに託された意味までを紐解く名著。
家康公は生前一度も日光を訪れていない。では、いったいなぜ「日光」だったのか。
江戸、富士山、久能山、世良田(群馬)と日光をめぐる壮大なコスモロジーや意味。そこに込められた想い。では、そもそもその想いは誰が込めたのか。その辺は今回の「ブラタモリ」でもテーマとなるのではないかと予想する。
東照宮以前の日光に想いを馳せる事もできる。
冒頭に著者は「反官贔屓」という語句を使用して、徳川家康の神格化や東照宮の(主に)明治以降の評価について述べている。これは、私も全く同感である。
「反官贔屓」や「偏見」というものは、未だにじっとりとつきまとっているように感じる。 読み解くのがそれくらい情報量の多い、東照宮である。陽明門一つとっても別名「日暮らしの御門」と呼ばれるわけだ。
しかし、平和な時代をつくりたい、という強い信念が結実し、打ち立てられたのが江戸時代と言える事は、いずれにしても明白である。
氏の著書は他にも複数あるが、是非、まずはこの一冊を。
(※現行本として購入可)
●「日光東照宮の成立」山澤学 著
地元出身の研究者である山澤氏の著書。
東照宮の成立過程と共に、門前町の形成過程や生業の様子までが丁寧に調査・整理されている。中でも祭礼という社寺と門前町(ここでは日光惣町と呼ばれる)を深く関係づけるものが紐解かれつつ書かれている点が大きい。 冷静に考えれば、家康公の遺言「日光に小堂を建て…」というものと、イメージする現在の東照宮の煌びやかな姿にはかなりギャップがあるのではないか。 では、なぜ今の姿になったのか。
「荘厳」はどのようにして成立したのかが伺える一冊。
(※古書として購入可能か?)
●「東照宮」大河直躬 著
東照宮という「建築」について知るならばこの一冊。
権現造(づくり)という、日光東照宮をはじめとする建築様式についても解説されている。
氏は、近年のインタビューでもタウトの評価(後述)を挙げて、それ以降の建築的評価の低下を指摘している。つまり、江戸が終わってからの明治〜大正までは「日本の代表的建築」という評価があったが、タウトの酷評以降は大きく評価が二分したと語っている。
新たな価値観が吹き込まれた結果ともいえるかもしれないが、必ずしも日光東照宮建造と造替の「意図」が伝わっての評価とは言えないだろう。
著者の大河氏は今年9月に逝去されたとのこと。
きめ細かい調査と分析に敬意を表しつつ、ご冥福をお祈りしたい。
(※古書として購入可)
●「東照宮の近代ー都市としての陽明門」内田祥士 著
造替、修復の履歴から、東照宮に関する評価、批判まで丁寧に並べ記されている。
神仏分離をどのように乗り越えたのか、特に明治以降の大きな修復にかかる場合、どのように議論され、工面されてきたのかが、本書で体系だてられている。
東照宮の彫刻、殊に陽明門の彫刻にはメッセージがあり、教育論を挙げているものが多い。
メッセージを込められた構造体を「建築」と呼ぶか「工芸作品」とするかで大きく評価は分かれることだろう。
「都市としての陽明門」という本書の副題でありキーワードにハッとさせられる。
(※現行本として購入可)
●「日本美の再発見」ブルーノ・タウト 著
桂離宮の高評価と裏腹に日光東照宮を「いかもの」「少しも親しみがない」と評したブルーノ・タウトの話しは有名である。
そもそも「親しみ」を求める空間ではない事は明白ではなかろうか。そして、彫刻一つ一つが物語るメッセージを理解した上での論考ではない事も大きい。
日本美を決めつけた、ある意味偏った、冷静な、評価とは言い難いものであると私は思っている。つまり、いわば「主義論」「印象論」に過ぎないのだ。
一方で、どのように外国人の目に映ったのかという参考程度にはなろうかと思う。
法隆寺大工の棟梁だった西岡常一氏も東照宮を指して「建築ではなく工芸品」「あんなもんは芸者」という扱いをしている。
「建築」というカテゴリーに当てはめた評価など、元来不要なのかもしれない。 時代の視点である。
400年経った現在だからこそ持てる視点と、できる評価があろうかと思う。
宮本健次氏の「桂離宮と日光東照宮〜同根の異空間」も一緒に。
(※現行本として購入可)
●「栃木の日光街道」日光街道ルネッサンス21推進委員会 編
東照宮の成立によって、「日光街道」も交通、物流などの要となった。
江戸の五街道のうちの一つである。しかし、決定的な違いは「参詣」の道であった事だろうか。その参詣の対象も非常に明確であったことは特異性を決定づけるだろうと思う
。 江戸と日光の関係性は非常に重要だった事が分かる。
本書は図画や写真の点数も豊富で、イメージを膨らませることができる。
鉢石山観音寺蔵の日光門前の古地図なども掲載されており、非常に興味深い。
(※古書として購入可)
手に入るものをと思いつつ選んでみたが、アマゾンや大手書店のネット通販などで調べてみると、現行で手に入ると思っていた本が、中古で今やえらい金額に跳ね上がっていることに驚く。
結果的に現行ですぐ手に入りそうなのは2冊のみという不親切なものとなってしまった。書店にお問い合わせいただきたい。
いかんせん、某日曜日の昼下がりのラジオ番組の、アーティストとかレーベル特集のようになってしまった。あるいは「棚からひと掴み」ように。
筆者撮影 |
まずは、最初に紹介した高藤氏の一冊を是非手に取っていただきたい。
よしなに。
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